メルボルン旅行記, 第3日目(月曜日)
春先のメルボルン、ビーチに行くなら、と持って来たビーチサンダルだったが、残念ながら最後まで彼らの出番はなかった。そうだ、そう簡単に全てが計画通りに行ってしまっては面白みはなにも残らない。思い通りに行かないからこそ旅は楽しく、いつまでも記憶に残るものになるのだ。
天気のよかった昨日、友人が「明日も晴れるよ」なんて言うもんだから、つい油断してしまった。傘も持たずに出てきてしまったのだ。そういえば彼女はその前に、この時期のメルボルンの天気は「It’s a gamble.」だって言ってたではないか。最終日のこの日は、晴れのち曇りのち雨。まさしくメルボルンの変わりやすい天気そのものであった。
肌寒いものの少しばかり晴れていた朝、コーリングウッド・チルドレンズ・ファーム(Collingwood Children’s Farm)に向う。AFLのグランドファイナルで戦ったチームの地元だ。春先ということでベイビーラッシュ、ヒツジやブタの子供に癒され、笑みがこぼれる。
そんな穏やかな雰囲気とは裏腹に雲行きがだんだんと怪しくなり、ポツリ、ポツリと雨のしずくが顔に当たり始めた。雨宿りもかねて、チルドレン・ファームの隣、アボッツフォード旧修道院(Abbothford Convent)内にあるレンティル・アズ・エニシング(Lentil as Anything)でランチを取ることに。ここはとてもユニークなシステムで、料金の書かれたメニューは一切ない。料理はベジタリアンメニューがずらりと並ぶバイキング形式。
料金システムはというと、“you pay what you feel / afford”「各々が払いたいだけ、払えるだけ」といった感じ。お店の片隅にマジックボックス(Magick Box)なる箱がおかれていて、そこに自分の思う金額を入れるのだ。ランチを終え、この素晴らしいシステムを長く続けて欲しいという思いも込めて、お金を多めに箱に入れる。
そんなしばしの雨宿りも助けにはならず、小雨の止まない肌寒い空の下、次の目的地セントキルダ(St Kilda)へと移動。晴れていれば最高の眺めが楽しめる場所ではないか、と残念に思いつつ、どんよりとねずみ色の空と海を眺めならがぶらぶら歩く。雨は降ったり止んだり。
到底ビーチサンダルで散策できるような好天ではなく、友人に借りたマフラーをグルグルに巻き、ジャケットのフードをかぶり、完全防備。これを春と呼んでいいのか、と考えてしまうほどの寒さだった。
セントキルダに来た目的は、ビーチはもちろんだが、一番はルナパーク(Luna Park)だ。友人が見せてくれた写真に一目惚れしたのだ。昔からある小さな遊園地といったところなのだが、なによりもその入口のデザインが最高なのだ。大きな口を開けた人の口がゲートになっており、そこに人々が食べられるかのように入っていくその光景は、写真だけでもかなり衝撃的だった。
そして実際それを目の前にしたら、笑わずにはいられなかった。天気には恵まれなかったが、もうそのゲートが見られただけで大満足である。近くのアクランド・ストリート(Acland Street)でウィンドウショッピングも少し楽しみ、友人との待ち合わせ場所のフリンダース・ストリート駅へと戻った。
セントキルダはAFLのグランドファイナルで戦ったもう一つのチームの地元でもある。友人には、一日でその両方に行くなんて素晴らしい計画だ、と褒められたのだが、もちろん偶然だ。友人に言われて初めて気がついたくらいである。しかしながら、どちらの地域もとても個性的で充分に楽しませてくれた。
春先と言えど、9月末のメルボルンはまだまだ寒い。夜は湯たんぽ(hot water bottle)と共に眠る毎日であった。ギャンブルに勝つか負けるかはその時まで分からないので、備えあれば憂いなしだ。春先のメルボルンを訪れる際には、ビーチサンダルとマフラーを忘れずに。
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